バレエに多い怪我とその症状
これまでノヅ・カイロ・クリニックにご来院されたバレエや各種ダンスをされていらっしゃる方の中で、多くみられた怪我や障害を部位別にまとめました。
同じ症状でお悩みの方は、是非一度ご相談下さい。
足首・足部編
1. 内反捻挫(ないはんねんざ) |
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2. 足関節後方インピンジメント症候群 |
3. 長母趾屈筋腱障害 |
4. 三角骨障害 |
5.アキレス腱炎/アキレス腱周囲炎 |
6. 足底腱膜炎(そくていけんまくえん) |
7. リスフラン関節症 |
8. リスフラン関節靭帯損傷 |
9. 中足骨疲労骨折 |
10. 有痛性外脛骨 |
11. 外反母趾 |
1. 内反捻挫(ないはんねんざ)
捻挫とは、関節の靱帯が損傷する怪我のことを言います。
もっとも多い足関節の捻挫がこの内反捻挫で、足首を内側にひねることで起こり、外側の靭帯に損傷がみられます。 特に、外くるぶし前部分の関節を支える前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)という靭帯へのダメージが大きく、この部分に腫れや痛みが生じます。 損傷がひどい場合は足首全体が腫れあがり内出血を起こします。
捻挫は、その損傷程度によって3段階にレベル分けされています。
■捻挫のレベル
Ⅰ度 | 軽くひねった程度で、靱帯が一時的に伸びている状態。腫れや痛みも軽く、2~3日で復帰可能。 |
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Ⅱ度 | 靱帯が部分断裂しており、腫れや圧痛も強い。副木やテーピングで固定が必要。復帰まで2~3週間かかる。 |
Ⅲ度 | 靱帯が完全断裂していて、腫れ、圧痛、熱感がとても強く、内出血を起こしている。医療機関での治療(ギプスなどによる固定、又は断裂靱帯の縫合手術)が必要。復帰まで1~2ヵ月程度かかる。 |
■足関節捻挫の対処法
急性期
すぐにRICE処置を行ってください。RICEとは、
「Rest(安静)」「Icing(冷却)」「Compression(圧迫)」「Elevation(挙上-心臓の位置よりも高く持ち上げる)」の頭文字をとったもので、患部の炎症や腫れを防ぐための応急措置の方法です。
慢性期
捻挫による腫れを早く引かせるためには血流を良くすることが大切です。そのためには患部を温めたり、血管を拡張し血行を良くする働きのあるアロマを使ったオイルマッサージも効果的です。
2. 足関節後方インピンジメント症候群(PAIS)
足関節後方インピンジメント症候群は、ポアントで立ったときなど「足関節をギュッと伸ばしたとき(底屈したとき)に足関節の後ろ側が痛む」のが特徴です。当院では「タンジュすると一番痛い」とおっしゃる方が多いです。
「アキレス腱の奥が痛い」という場合、アキレス腱炎ではなくこちらが疑われます。 原因としては主に2つの要素があります。1つ目は長母趾屈筋腱炎や、足関節を強く底屈させたときに靭帯組織が脛骨と踵骨の間に挟まり関節後方に炎症を起こすといったような軟部組織性のもの。そして2つ目は、三角骨や距骨後突起の骨折など骨性のものです。
3.長母趾屈筋腱障害(ちょうぼしくっきんけんしょうがい)
バレエの障害の中でも多いのがこの長母趾屈筋腱の障害です。
「ポイントしたときに内くるぶしの下あたりが痛む」のが特徴で、ルルヴェアップを繰り返し行うことで起こります。長母趾屈筋(FHL=flexor hallucis longus)は、ふくらはぎから始まり、その腱が内くるぶしの下の腱鞘の中を通って母趾に付いています。このため使い過ぎなどにより母趾に負荷がかかると長母趾屈筋腱炎や腱鞘炎を発症します。 症状が進むとバネ指になる場合もあり拇趾を伸ばすときに弾けるような音がします。また、三角骨症候群と合併して起こることが多くあります。
4.三角骨障害
三角骨は、距骨後突起の後ろにできる過剰骨(副骨)と言われる小さな余分な骨で、10人に1人くらいはあると言われています。日常生活には支障がありませんが、この骨があると関節の動きを三角骨が邪魔してつま先が伸びなくなってしまいポアントで立ちづらいといったことが起こります。
また、三角骨が脛骨と踵骨の間に挟まれることで痛みが出る有痛性三角骨を発症したり、三角骨のすぐ隣を長母趾屈筋の腱が通っていることから長母趾屈筋腱障害を併発することが多くあります。 足の使い方や、重心の問題があるままポアントワークを続ていくことで「症状が悪化する」場合があるので、改善が必要です。
5.アキレス腱炎/アキレス腱周囲炎
アキレス腱は、ふくはぎの筋肉である腓腹筋とヒラメ筋をかかとの骨に付着させる人体中最大の腱です。 腓腹筋とヒラメ筋の筋力をかかとの骨に伝える働きがあり、これによって歩行、ジャンプやつま先立ちの動作を行うことができます。 とても強靭な腱ですが、かかる負担も大きく、オーバーユースなどで繰り返し負荷がかかると周辺組織が炎症を起こしてしまいます。 ポアントワークなどの際、ふくらはぎの筋肉を主導筋として使ってしまうことでオーバーユースとなってしまうこともあるので使い方にも注意が必要です。 また、「腓腹筋」と「ヒラメ筋」が急激に収縮した時、アキレス腱にストレスがかかりわずかな断裂が生じることで腱自体の炎症が起こる場合や、足のアライメントが崩れていることが原因の場合もあります。 症状としては、アキレス腱に腫れや痛みが生じ、押さえると痛みが増します。 痛みを我慢してレッスンを続けてしまうと症状が進み、腱の断裂(アキレス腱断裂)に至る場合もあるので早めにケアすることが必要です。
6. 足底腱膜炎(そくていけんまくえん)
足底腱膜は、かかとの骨から足の指の付け根まで、足の裏に張られた腱の膜です。 アーチ状になった「土踏まず」を支えることや、ジャンプやランニング時に地面と足部の衝撃を和らげるクッションの役割をしています。 ジャンプで足を蹴り出すときにかかる力や、着地時にかかる衝撃など、足底に負担の加わる動作が過剰に繰り返されることで足底腱膜に炎症が起き、 足裏のかかとよりのあたりが痛みます。足底の筋力が弱い、アキレス腱が硬い、踵骨に歪みがある、スタジオの床が固いなども原因となります。 足底腱膜炎初期の頃は「朝、起きて踏み出した一歩目は痛むが、しばらく歩いていると痛くなくなる」という特徴があります。 そのためレッスンを続けてしまい症状が慢性化することもあるので気を付けましょう。
7. リスフラン関節症
リスフラン関節とは中足骨と足の甲の骨の間にある関節です。この関節の部分の骨が歪み、炎症が起こり、痛みを生じた状態がリスフラン関節症です。
初期のうちは「甲が少し腫れ、体重をかけると骨がきしむような痛みがある」という感じですが、悪化すると激痛になっていきます。
通常、外反母趾が一番の原因ですが、バレエダンサーの場合、正しくポアントにのれていないことで起こるケースが多々あります。
当院でも一番負荷のかかる「人差し指のリスフラン関節」の骨が亜脱臼を起こしている方をこれまで何名か診ています。
8. リスフラン関節靭帯損傷
リスフラン関節症同様「甲が痛む障害」ですが、こちらは関節そのものではなく、関節をつなぎとめている靭帯の損傷で、足の甲の捻挫と言われるものです。通常の捻挫(内反捻挫)と違い、ひねった自覚がない場合でも、つま先に体重が強くのったことで発症する場合もあります。足をついただけで強い痛みがあり、 歩行が困難となります。リスフラン関節を痛めてしまうと、アーチが低下し衝撃を吸収する力も落ちてしまいます。
9. 中足骨疲労骨折(ちゅうそっこつひろうこっせつ)
金属疲労と同様に、繰り返し中足骨(足アーチ)へストレスが加わることで起こる骨折です。 怪我をした記憶がこれと言ってないのに、足の甲に痛みが続くようなときには、この可能性があります。 体重の重さ・バランスのかけ方・筋力不足が原因として挙げられますが、バレエダンサーの場合、ポアントやジャンプの回数が増えることで発症しやすいと考えられます。 第2第3中足骨に起こるケースが多く、人差し指が長い【ギリシャ型】のタイプの方は、特に第2中足骨に疲労骨折が起こるリスクが高いです。 初期の頃はレントゲン画像でも分かりにくく、整形外科で「骨折ではない」と言われ、ハードなレッスンを続けた結果「難治性骨折」になってしまう場合もあるので注意が必要です。 またバレエダンサーは、生理不順や無月経といった月経異常になっている方が多く、 その場合ホルモンの影響で、骨密度が下がり骨折をしやすくなるので、カルシウムの摂取量を増やすよう心がけましょう。
10. 有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)
外脛骨とは、舟状骨(しゅうじょうこつ)の内側にある過剰骨(よけいな骨)もしくは種子骨の一つで、約15%の人にあると言われています。舟状骨はシンスプリントの原因にもなる後脛骨筋(こうけいこつきん)と呼ばれるふくらはぎにある筋肉が付いていて、オーバーユースなどにより筋肉が疲労し硬くなってしまった結果、後脛骨筋腱に引っ張られ外脛骨に炎症を起こし痛みを生じます。成長期である10~15歳くらいの子どもに多く見られますが、大人でも発症します。 痛みが出る原因としては、捻挫などの外傷や、靴による圧迫、回内足などアライメントの異常、筋力不足によるアーチの低下などが挙げられますが、バレエでは、ターンアウトの不足からロールインしてしまっていることも大きな原因となっています。
11. 外反母趾/内反小趾(ないはんしょうし)
外反母趾とは、母趾(足の親指)が、人差し指の方へ「くの字」に曲がってしまう変形のことで、身体の中心線から見て(解剖学では「身体の中心線」が基になる)、母趾が外側に向いていることから外反母趾と呼ばれています。 母趾のつけ根のMTP関節が内側に突き出し、バニオンと呼ばれる「たこ(腫れ)」ができ痛みます。 症状が進むと母趾で地面を支えられなくなり、人差し指や中指の足底面への負担が増加します。その結果アーチが崩れ、足底にもバニオンができ痛むようになってしまいます。
外反母趾は、アーチの崩れが大きな要因であると考えられ、足底の筋力低下や、靭帯がゆるくなってしまったことがその原因です。また、拇趾が一番長いタイプである【エジプト型】の方は、発症のリスクが高く、日本人の約70%はこのタイプだと言われています。 内反小趾(ないはんしょうし)は小指が内側に曲がってしまう変形ですが、外反母趾に比べると、症状が軽い場合が多いようです。